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笑いのニューウェーブ、漫才師『和牛』|芸風と感想


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みなさまお気づきだろうか?

 

『和牛』の漫才は、ピン芸と、コンビ芸を融合させた新しいスタイルのお笑いだということに。

 

彼らの漫才をみて、独自の笑いの起点が生じるのは、従来までの「ボケに対するツッコミ」とは異なる、「ピン芸をおもわせるボケに、示唆するようなツッコミ」を入れる構図があるためだ。

 

これまで、相方の一人世界をもう一方の相方が静かに眺めるシーンは存在したが、『和牛』ほど、息が長く、それも自然と世界観を継続できるコンビも珍しい。

 

こんかいは笑いのニューウェーブ『和牛』をご紹介したい。

 

 

和牛のプロフィール

 

結成/2006年

事務所/よしもとクリエイティブ・エージェンシー

スタイル/漫才、コント

賞/第30回ABCお笑い新人グランプリ優勝

第31回ABCお笑い新人グランプリ優勝

第43回上方漫才コンテスト優秀賞

第44回上方漫才コンテスト優勝

2013年オールザッツ漫才優勝

M1グランプリ2016、2017、2018三年連続準優勝

第53回上方漫才大賞奨励賞

 

ボケ担当:水田信二(みずたしんじ)

誕生日/1980年4月15日生まれ

出身地/愛媛県

身長/166Cm

血液型/O型

趣味/サッカー、フットサル

 

ツッコミ担当:川西賢志郎(かわにしけんしろう)

誕生日/1984年1月29日生まれ

出身地/大阪府

身長/170Cm

血液型/O型

趣味/釣り

 

[同期]

天竺鼠

 

和牛の考察

 

はじめて『和牛』の漫才をみたとき、頭の縁っこには、ちいさな違和感が残ったのだが、まあはじめてみるわけやからと、当時はあやふやにしてしまった。

 

彼らの漫才は、一度みておもしろく、二度みて、それに馴染み、三度みてはじめて芸風がつかめてくるという不思議なコンビだ。

 

良い意味で、漫才を聞いていて、なんだか、二人のやりとりに途方もない距離感を感じてしまう。

 

それもそのはず、ザックリいえば、水田さんの一人芸を川西さんが第三者視点でとらえた冷静なツッコミをするというスタイルの作品が多い。(もちろん一般的な漫才の作品も存在する)

 

漫才のストーリーは基本的に水田さんの相談や、悩み、心境といった部分から端を発し、川西さんおかまいなしに、漫談的に進行していくなか、川西さんのほうもおかまいなしにマイペースに構え、序盤のうちは水田さん

に、肯定的な立場をとる。

 

水田さんのネタ中でのはなしは、その悩みや心境という外見をかぶった、本人の思い込みや、勘違いを扱った設定の芸が多い。

 

水田さんの「オレ◯◯な人に結構好かれんねん」という、冒頭からやや、自慢気なはなしを展開するときも、当初は目立ったツッコミを控える川西さんが、水田さんのはなしが、「オレ好かれんねん~オレはモテんねん」に、シフトしていくとき、「えらいじぶんがモテる設定なんやね」と冷静なツッコミを披露しはじめる。

 

 

水田さんの主観性は、決して突飛なものではなく、ごくごく一般的な範囲であり、観客は共感しやすく、その主観に潜む、普遍性の正体をあばいていくという過程で笑いが生まれる。

 

『和牛』の漫才はじっくりみればみるほど、脳とこころにじわ~っと染み込んでくる。

 

「束縛」の内容では、水田さん(彼氏役)川西さん(彼女役:この設定は多い)で、水田さんの束縛彼氏ぶりが、川西さんを混乱させていく。

 

「美容室とかいかんといてほしいねん。おしゃれで男前な人に髪切ってもらったらその人のこと好きになってしまうから」

 

中略

 

「じゃあ私髪の毛切どうすれば…」

 

「月一でベランダでオレが切ったげるから」

 

水田さんの心情の設定は誰しもがもつこころの一部を拡大させたものだ。

 

そこで川西さんが゛鏡゛の役割を担っており、水田さんの、膨らむ勘違いを観客に向けて映しだしており、観客は漫才の節々に水田さんのピン芸をみてる、と感じさせられるのだが、実は川西さんの隠れた存在感が大きい。

 

水田さんの勘違い設定の世界を成立させるためには、川西さんの静な立場が必須であり、観客も、オレも水田さん的な要素があるわあ~と、無意識に水田さんに共感しはじめるころ、川西さんのツッコミで、現実感を取り戻す。

 

おなじ作品を何度かみると、そこにはピン芸+ピン芸が合わさり、新しい笑いが生まれたような感覚を覚える。

 

そして漫才のさいごに「おさらい」を盛り込むのも『和牛』の漫才の特徴で、これまでの水田さんの言動の矛盾を指摘する川西さんのツッコミは、序盤ほど柔らかくはない。

 

終始観客が感じてきた、モヤモヤ感をここぞと払拭して、浄化する作用がある。

 

ツッコミの力を抑えてきて、さいごのさいごで、均衡をとるという、実力派コンビならではの妙技だ。

 

終わりに

 

はじめてみた『和牛』の漫才でも、水田さんが彼氏役で、川西さんが彼女役で、じぶんのなかで、現在もその印象がつよい。

 

少しお笑いから離れていた時期があったが、たまたま、テレビで、『銀シャリ』や『和牛』の漫才をみる機会があり、ふたたび、漫才熱にスイッチが入った。

 

「うまいなあ………」

 

ある時期から比べて、現在テレビに登場する漫才師さんは、相当うまいと感じるし、その個性もさながら、無理がなく当人たちとの融合を果たしている。

 

『和牛』もそんな個性派実力コンビの一角であり、みごとに、新しい芸風の確立に成功したといえるだろう。

 

こんごも、持ち味と実力を活かした漫才をみせてほしいとおもう。

 

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