原石から大御所まで

芸人について書いていきたいとおもいます。

『サンドウィッチマン』の功績がすごい|芸風と感想


f:id:tarookadato:20190419131320j:image

みなさまお気づきだろうか?

 

2007年にM1で優勝を果たしたのち、『サンドウィッチマン』の漫才やコントは、進化を続け、もはや、芸術と呼んでも差し支えないほどに中身が充実していることを。

 

個人的に、漫才史に影響を与えた、偉大なコンビをあげるとすると、まず、゛ツービート゛、いわずとしれた゛ダウンタウン゛実力派の゛中川家゛そして゛サンドウィッチマン゛と考えている。

 

そして、漫才、コントに関する意見も世にさまざまあるだろうなか、はばかりながら、個人的見解を述べるならば、現時点で史上最もうまい漫才師は『サンドウィッチマン』だ。

 

個人的にではあるが、自信をもって断言する。

 

前回、天才サンドウィッチマン|大御所になっても進化を続ける|芸風と感想サンドウィッチマンのプロフィールはご紹介させていただいたが、再び書かせていただいたのち、サンドウィッチマンの残した功績をふまえて書いてみたい。

 

目次

 

 

サンドウィッチマンのプロフィール

 

結成/1998年
所属事務所/グレープカンパニー
スタイル/漫才、コント
賞/2007年M1王者

ツッコミ担当:伊達みきお(だてみきお)

誕生日/1974年9月5日生まれ
出身地/宮城県
血液型/A型
身長/170cm
特技/卵の外見から、生卵か茹で卵か判断できる


ボケ担当:冨澤たけし(とみざわたけし)

誕生日/1974年4月30日生まれ

出身地/宮城県
血液型/AB型
身長/170cm
特技/スポーツゲーム

 

<詳しくは>

https://grapecom.jp/talent_writer/sandwichman/

 

サンドウィッチマンの漫才とコント

 

サンドウィッチマン』の芸風の特徴は二つある。

 

まず冨澤さんのボケに対して、いらだちをみせながらも、一場面一場面、伊達さんが楽しんでボケに乗るというスタイル。

 

二つ目は、お二人にしかわからないような、もしくは、あまり一般的に知られていない、身内ネタをいれて、わざとスベらせて、その状線を回収するというもの。

 

ラグビーの漫才では、たびたび、直接ラグビーと関係ない「男塾」(漫画)の話題をふる冨澤さんに対して、そのつど、男塾塾長江島平八風に男塾名物を読み上げる。

 

「男塾名物!らぐびい!」

 

「男塾名物!竹林拳相撲!」

 

伊達さん「この漫画誰がついてくるんだ、何人男塾を知ってるんだ」といいつつ、楽しげ。

 

サンドウィッチマン』の芸風には、ボケにもツッコミにも、いやみさや、ナルシズムさがまったく感じられない。

 

それゆえに観客に負荷がかからず、よくわからないネタでも、二人のやりとりだけで笑ってしまう。

 

 

そんな『サンドウィッチマン』の作品で、一般的な知名度で、多くの人から傑作とうたわれるのは゛ピザ゛か゛職務質問゛あたりではないだろうか?

 

ふだんのオーソドックスな芸で、いわゆる伊達さんツッコミ、冨澤さんボケのケースで、漫才、コント合わせて、個人的に傑作を決めるとすると、゛レストラン゛か゛ソーギヤ゛である。

 

そして『サンドウィッチマン』はどちらも、ボケとツッコミができるのが特徴だ。

 

サンドウィッチマン』の作品には、二人両方が、すごい頻度でボケとツッコミを代わる代わる繰り返す、秀逸作が存在する。

 

「パンダ」だ。

 

この辺りは、コアなファン向けの話題なのだが、個人的に「パンダ」は『サンドウィッチマン』の真骨頂であり、遊び心あふれた最高傑作だと感じる。

 

実際、ボケとツッコミ両方できるコンビは他にも存在するが、基本ツッコミ担当がボケに入れ替わるときは、漫才中の流れに乗るのがふつうなのだが、「パンダ」では、設定上の役柄として、それが違和感なく成り立つのがすごい部分だ。

 

もちろん基本ツッコミ担当の園長役の伊達さんが、パンダを動物園にいれたことにちなんで、「パンだこのやろう!」と猪木風にいう辺りなど、こんな人いそうだなと、自然と感情移入ができる。

 

なにかのドラマのワンシーンのようで、わざわざとってつけた感がない。

 

自然と端を発し、自然と終わるのが『サンドウィッチマン』の漫才であり、コントである。

 

簡単ではあるが、特徴をあげたので、これからはいよいよ本題にはいりたい。

 

 

サンドウィッチマンの考察[その功績]

 

アクの強い笑いで、関東の笑いを牽引した「ツービート」、デビュー当時は、その新しさに困惑すら与えた「ダウンタウン」、ボケとツッコミを両者がこなす「中川家」、サンドウィッチマンの実力がそんな彼らの領域に到達したのは、M1で優勝して、しばらくたってからだ。

 

M1優勝当時ですら、その実力は、郡をぬいており、千鳥をもってして、「すごいやつらがでてきた」といわしめるほど。

 

当初、「強もて風の漫才」で、ツッコミの伊達さんのことばの力は、すごいものがあったのだが、年数が経つごとに、そのスタイルがだんだんと柔らかいものに変わってきた。

 

そして現在『サンドウィッチマン』の芸風こそ、大げさではなく、ある種の漫才の最大進化系とおもえる。

 

その特徴は

 

サンドウィッチマン』の漫才は相方の頭をはたかない。

 

サンドウィッチマン』のボケは誰が聞いてもわかりやすいクラシックなもの。

 

サンドウィッチマン』の漫才は、流れとしてみた場合、乱暴なことばをあまりつかわない。

 

サンドウィッチマン』のツッコミは、ふつうのことばを使う。

 

サンドウィッチマン』の漫才や、コントの特徴は、どこまでも、冨澤たけし、伊達みきおという人柄を象徴していることがあげられる。


f:id:tarookadato:20190419213518j:image

伊達みきおという人が、本人をそのまま演じている部分が最大級のすごさなのだ。

 

本人をそのままやるというのは、一見かんたんなようだけど、念頭においてもらいたいのは、漫才師がやる内容というのは、リアルな日常そのものの表現ではない。

 

例えそれが個人世界の演出だとしても、観客から離れすぎてはならないし、その尺度を調整するためには、ある程度の作り込みをしなければならないため、本人の独自性をどこまで発揮できるのかは、そく実力を表すのだ。

 

先ほどあげた、他の3組のコンビでもいえるけれど、一流の漫才師は、どこまでも「素」の状態である。

 

サンドウィッチマン』の笑いの成功は、間のうまさに加えて、二人の人物像を観客に伝える、表現力の高さである。

 

観客は、漫才という短い時間で彼らのことを知ることとなる。

 

芸風は、冨澤さんの、さきが読めないボケかたに対する、伊達さんの、的確なツッコミ。

 

「哀川鳥」では、乗客の伊達さんが、キャビンアテンダント約の冨澤さんに、眠るために「なんかかけるものもってきてくれ」という投げ掛けに対して、冨澤さんは「カレー」でよろしいですか?と返す。

 

ある種、オーソドックスでクラシックな漫才やコントスタイルなのだが、展開が予測ができないために、観客は

 

「そうきたか!」

と、常におもわされる連続だ。

 

その後、冨澤さんの投げ掛けに、伊達さんの「辛いほうがあったかいのか?」

というツッコミも秀逸。

 

二人のやりとりは、ことばのマジックではなく、コンセプトの成立によって、ひたすら、みるものを楽しませる仕掛けとなっている。

 

ふつう漫才というのは、積極的に笑いをとりにいくもののほうが多く、奇抜なことばや、シチュエーションを用意したくなるものではないだろうか?

 

しかしサンドウィッチマンの漫才は、ありとあらゆる゛過剰゛な要素がなく、一種の日常風景をみているような朗らかさが存在する。

 

漫才がはじまってから、みおわるまで、ずっと、緊張感なくして、みていられる。

 

それは従来の漫才において、決してふつうのことではない。

 

うまいと評価される漫才コンビをみるときでも、「期待」とともに「緊張感」をともなうものだからだ。

 

サンドウィッチマン』が証明したことは、漫才とは、面白いことばも、過激なツッコミも、奇をてらったストーリーも必要なく成立するということだ。

 

お笑いは、笑わそうと、狙いすぎた場合、そこには、一種の歪みがうまれて、みている側にストレスがかかる。

 

また人は強力なことばをきくと、面白さとどうじに、不快感もおぼえてしまう。

 

多くの芸風に存在するそれらの、部分を『サンドウィッチマン』の漫才はみごとにクリアしており、彼らは唯一無二の存在といえるだろう。

 

その功績はすごい。</p  

 

サンドウィッチマンの考察2[功績]

 

サンドウィッチマン』といえば、東北魂や、観客への配慮という点などから、優れた人柄が伝わってくる。

 

サンドウィッチマン』の、ガツガツ笑いをとりにいかないで、それでいて、観客の笑いがおこる要因の一つに、観客に愛されていることがうかがえる。

 

漫才に必要なのは、実力だけでなく、みている側とのコミュニケーションがうまくとれるかという部分が重要だ。

 

それは、漫才の祭典のような、連続して、漫才師が登場する場合で顕著に現れる。

 

いかに面白い芸風であっても、後半になるにしあがって、みている観客がじょじょに疲れてくる。

 

ゆえに後半になればなるほど、いかにヒートアップしていっても、疲れだけはどうにもならないから、無理に笑いをとることは難しい。

 

場面は熱気のピークを越えているのだから、癒しの要素、落ち着いた場面が、観客のクールダウンにちょうど適している。

 

有識者である「タモリ」の、コミュニケーション術の一つに、゛質問しすぎちゃいけない。じぶんのことをはなすと、相手もはなしだす゛というのがある。

 

笑いも押してもダメなら引いてみな、という理屈に似ていて、笑いをとりにいきすぎると、観客は疲れてしまう。

 

その点『サンドウィッチマン』の漫才は観客の、自然な共感を得ることに成功しているといえる。

 

笑いがほんとに観客のことを配慮しているかどうかを、観客は感じとる。

 

恋愛だって駆け引きが大切なのだ。

 

すなわち、なにがいいたいかというと観客が好感の目で、漫才をみるかどうかという部分は、必須要素なのだと、彼らの漫才から、あらためて感じさせられる。

 

サンドウィッチマン』のお二人はどれだけ売れても、人柄はかわらず、また、謙虚な姿勢のままだ。

 

漫才の醸し出す雰囲気は、そく、その人物の醸し出す雰囲気だ。

 

サンドウィッチマン』の漫才は、漫才師側からだけのアプローチだけでなく、観客の参加があってこそ、スベらないでいて、面白い漫才ができることを証明した。

 

しつこいようだが、観客側からの参加があってこそ、浮き沈みや、コンディションに左右されにくい、漫才道を歩めるのではなかろうか?

 

バランス、実力、人柄これだけ揃ったコンビがこれまで存在していただろうか?

 

否、いないと断言しよう!

 

 

終わりに

 

お笑いご三家といえば、「北野たけし」、「明石家さんま」、「タモリ」であるのだが、現代お笑いご三家といえば、「サンドウィッチマン中川家、ナイツ」だろう。

 

サンドウィッチマン』たち三人が集まり漫談をしているのをみると、さすがの貫禄だ。

 

彼らは上質で、上品な笑いを提供している。

 

さきほどからあげた『サンドウィッチマン』の笑いの、根幹は、お二人の人物像だ。

 

サンドウィッチマン』の地方ライブではよく、゛地方ネタ゛を漫才にもりこむ。

 

北海道の歌ネタだと、松山千春さんや、北海道の歌をいれたりするあたりにも、配慮が感じられる。

 

そして『サンドウィッチマン』はライブでよく、客いじりをする。

 

そして、毎度、必ずいじられる方がいらして、彼は『サンドウィッチマン』が有名になるまえからのファンなのだ。

 

ライブ中には彼との微笑ましい絡みがみられる。

 

客いじりと、ネタと、どちらの密度が濃いのか………。

 

なんせネタよりも長い時間をかけて、観客とコミュニケーションをとるのだから、彼らがほんとにお客を大事に考え、ファンの一人一人を大切にしてきたことがわかる。

 

サンドウィッチマン』ふくめ新しいお笑いご三家が、つぎの漫才、コントのスタイルを牽引していってほしいとおもう。

 

また、時代的にも、加速するだけではない、新しい漫才の世界をみせてもらいたい。

 

さて、『サンドウィッチマン』の漫才を芸術レベルにまで昇華した功績を讃えて、こんかいはおわろうとおもう。

 

 

[関連記事]

緊張感と開放感のコンボ、コント師『バイきんぐ』|芸風と感想

 

若き一流漫才師『ミキ』|芸風と感想

 

誰もが一度はハマってしまうピン芸人『ヒロシ』|芸風と感想

笑いのニューウェーブ、漫才師『和牛』|芸風と感想


f:id:tarookadato:20190415230652j:image

みなさまお気づきだろうか?

 

『和牛』の漫才は、ピン芸と、コンビ芸を融合させた新しいスタイルのお笑いだということに。

 

彼らの漫才をみて、独自の笑いの起点が生じるのは、従来までの「ボケに対するツッコミ」とは異なる、「ピン芸をおもわせるボケに、示唆するようなツッコミ」を入れる構図があるためだ。

 

これまで、相方の一人世界をもう一方の相方が静かに眺めるシーンは存在したが、『和牛』ほど、息が長く、それも自然と世界観を継続できるコンビも珍しい。

 

こんかいは笑いのニューウェーブ『和牛』をご紹介したい。

 

 

和牛のプロフィール

 

結成/2006年

事務所/よしもとクリエイティブ・エージェンシー

スタイル/漫才、コント

賞/第30回ABCお笑い新人グランプリ優勝

第31回ABCお笑い新人グランプリ優勝

第43回上方漫才コンテスト優秀賞

第44回上方漫才コンテスト優勝

2013年オールザッツ漫才優勝

M1グランプリ2016、2017、2018三年連続準優勝

第53回上方漫才大賞奨励賞

 

ボケ担当:水田信二(みずたしんじ)

誕生日/1980年4月15日生まれ

出身地/愛媛県

身長/166Cm

血液型/O型

趣味/サッカー、フットサル

 

ツッコミ担当:川西賢志郎(かわにしけんしろう)

誕生日/1984年1月29日生まれ

出身地/大阪府

身長/170Cm

血液型/O型

趣味/釣り

 

[同期]

天竺鼠

 

和牛の考察

 

はじめて『和牛』の漫才をみたとき、頭の縁っこには、ちいさな違和感が残ったのだが、まあはじめてみるわけやからと、当時はあやふやにしてしまった。

 

彼らの漫才は、一度みておもしろく、二度みて、それに馴染み、三度みてはじめて芸風がつかめてくるという不思議なコンビだ。

 

良い意味で、漫才を聞いていて、なんだか、二人のやりとりに途方もない距離感を感じてしまう。

 

それもそのはず、ザックリいえば、水田さんの一人芸を川西さんが第三者視点でとらえた冷静なツッコミをするというスタイルの作品が多い。(もちろん一般的な漫才の作品も存在する)

 

漫才のストーリーは基本的に水田さんの相談や、悩み、心境といった部分から端を発し、川西さんおかまいなしに、漫談的に進行していくなか、川西さんのほうもおかまいなしにマイペースに構え、序盤のうちは水田さん

に、肯定的な立場をとる。

 

水田さんのネタ中でのはなしは、その悩みや心境という外見をかぶった、本人の思い込みや、勘違いを扱った設定の芸が多い。

 

水田さんの「オレ◯◯な人に結構好かれんねん」という、冒頭からやや、自慢気なはなしを展開するときも、当初は目立ったツッコミを控える川西さんが、水田さんのはなしが、「オレ好かれんねん~オレはモテんねん」に、シフトしていくとき、「えらいじぶんがモテる設定なんやね」と冷静なツッコミを披露しはじめる。

 

 

水田さんの主観性は、決して突飛なものではなく、ごくごく一般的な範囲であり、観客は共感しやすく、その主観に潜む、普遍性の正体をあばいていくという過程で笑いが生まれる。

 

『和牛』の漫才はじっくりみればみるほど、脳とこころにじわ~っと染み込んでくる。

 

「束縛」の内容では、水田さん(彼氏役)川西さん(彼女役:この設定は多い)で、水田さんの束縛彼氏ぶりが、川西さんを混乱させていく。

 

「美容室とかいかんといてほしいねん。おしゃれで男前な人に髪切ってもらったらその人のこと好きになってしまうから」

 

中略

 

「じゃあ私髪の毛切どうすれば…」

 

「月一でベランダでオレが切ったげるから」

 

水田さんの心情の設定は誰しもがもつこころの一部を拡大させたものだ。

 

そこで川西さんが゛鏡゛の役割を担っており、水田さんの、膨らむ勘違いを観客に向けて映しだしており、観客は漫才の節々に水田さんのピン芸をみてる、と感じさせられるのだが、実は川西さんの隠れた存在感が大きい。

 

水田さんの勘違い設定の世界を成立させるためには、川西さんの静な立場が必須であり、観客も、オレも水田さん的な要素があるわあ~と、無意識に水田さんに共感しはじめるころ、川西さんのツッコミで、現実感を取り戻す。

 

おなじ作品を何度かみると、そこにはピン芸+ピン芸が合わさり、新しい笑いが生まれたような感覚を覚える。

 

そして漫才のさいごに「おさらい」を盛り込むのも『和牛』の漫才の特徴で、これまでの水田さんの言動の矛盾を指摘する川西さんのツッコミは、序盤ほど柔らかくはない。

 

終始観客が感じてきた、モヤモヤ感をここぞと払拭して、浄化する作用がある。

 

ツッコミの力を抑えてきて、さいごのさいごで、均衡をとるという、実力派コンビならではの妙技だ。

 

終わりに

 

はじめてみた『和牛』の漫才でも、水田さんが彼氏役で、川西さんが彼女役で、じぶんのなかで、現在もその印象がつよい。

 

少しお笑いから離れていた時期があったが、たまたま、テレビで、『銀シャリ』や『和牛』の漫才をみる機会があり、ふたたび、漫才熱にスイッチが入った。

 

「うまいなあ………」

 

ある時期から比べて、現在テレビに登場する漫才師さんは、相当うまいと感じるし、その個性もさながら、無理がなく当人たちとの融合を果たしている。

 

『和牛』もそんな個性派実力コンビの一角であり、みごとに、新しい芸風の確立に成功したといえるだろう。

 

こんごも、持ち味と実力を活かした漫才をみせてほしいとおもう。

 

[関連記事]

誰もが一度はハマッてしまうピン芸人『』ヒロシ』|芸風と感想

 

理不尽と笑いは紙一重?怒涛の漫才師『かまいたち』|芸風と感想

誰もが一度はハマってしまうピン芸人『ヒロシ』|芸風と感想


f:id:tarookadato:20190415130950j:image

お気づきだろうか?

 

おなじみ「ヒロシです」からはじまる『ヒロシ』の芸風は自身を悲観しているようにみせて、だれしもが抱く孤独の代弁を行う部分に、根強い人気があるということを。

 

ヒロシさん自身が継続的立場にないことを意識しているような内容を口にする一方で、勝手な推測にすぎないけれど、隠れたファンが多い気がしてならない。(ボクもその一人なのだけど)

 

その証拠に、゛笑点゛やそのほかのお笑い番組で、たびたび例の哀愁漂う芸を披露する姿が目立つからだ。

 

こんかいは、『ヒロシ』をご紹介したい。

 

 

ヒロシのプロフィール

 

活動期間/1995年~

事務所/ヒロシ・コーポレーション

スタイル/漫談

賞/第1回お笑い芸人歌がうまい王座決定戦スペシャル優勝(2005年)

 

ピン芸人:ヒロシ

誕生日/1972年1月23日生まれ

出身地/福岡県

身長/175Cm

血液型/O型

趣味/キャンプ、釣り

 

[同期]

パンクブーブー

 

ヒロシの考察

 

「ツービート」や「ダウンタウン」に憧れお笑いの道に入った『ヒロシ』、彼の漫談のなかに、お笑いが好きで、人が笑うのが好きなんだろうなあという、気持ちが伝わってくる。

 

漫才師として、順風満帆にてっぺんに向かって駆け抜けるという、スタイルではないものの、ネタの箇所箇所に、人のお笑いポイントを鋭く抑えるという着眼点が、『ヒロシ』には存在する。

 

漫談は、どこか影のあるキャラクターの『ヒロシ』が、悲しい音楽を背景に、マイクを前にうつむき加減で「ヒロシ」です、と主に私生活のダークな側面を語りはじめるというもの。

 

ヒロシです………ずっと通っている美容室でのはなしですが、オレがテレビにでているときよりも、作業が雑になった気がします」

 

という感じだが、いやあ、おもしろい。

 

私生活ネタというのは決して珍しいわけではなく、多くのピン芸人がネタにするのであるが、実際に、その内容に共感を要求するとなると難しい技だ。

 

「キャラクターのしっかりした確立+優れた客観性(じぶんが求められていることの把握など)」が揃ってこそ可能なわけであり、『ヒロシ』の場合は実際に、そうした要素を満たしていたがゆえに、爆発的な人気を得られたと考える。

 

また、『ヒロシ』と時代とを結びつける接点には、彼の歩んだ形跡が、リアルに表現されているゆえの面白さだ。(純粋でストレートなネタだ)

 

ネタの終わりは「ヒロシです…」「ヒロシです…」「……ヒロシです………」とじぶんの名をいいつつも、徐々に、声が小さくなり存在アピールが弱々しくなって、しまいに照明が暗くなる。

 

暗くなった舞台には、笑い以外に、ほのかな哀愁が残るのが、オツだ。

 

ところで、個人的なはなしだけど『ヒロシ』の漫談は、なぜか、゛それを期待して笑ってはいけない゛ような気がするのだ。

 

どちらかといえば、じぶんの身の周りに起こる出来事とダブらせて、ああ、可笑しいなあと感じるほうがしっくりくる。

 

シチュエーションそのもののクォリティーが高いため、「こんな状況はいかがかな?」と、まるで、ボク自身の内面に問いかけられているような気分とでもいおうか…。

 

『ヒロシ』のネタにある、ひととしての尊厳という紙一重のヒヤヒヤ感がたまらない。

 

そして、哀愁という、演出のなかに、ほんものの哀愁が存在する芸風は、彼ならではの魅力といえるだろう。

 

 

終わりに

 

『ヒロシ』の漫談は、気づくとネタのバリエーションが増えており、見るたびに新鮮な笑いがある。

 

彼の笑いが飽きない理由は、時代とともに歩んできた、本人の生きざまがネタのなかにあふれ、観客とのリアルな接点を生むからだ。

 

個人的には、これほど印象的なピン芸人はほかにいない。

 

『ヒロシ』のネタは、ネタの一個一個ではなく、ネタと、ネタを構成する背景など、複合的要素が絡みあって面白いものとなっている。

 

これからも時代をこえた漫談を聞かせてもらいたい。

 

[関連記事]

天才サンドウィッチマン|大御所になっても進化し続ける|芸風と感想

理不尽と笑いは紙一重?怒涛の漫才師『かまいたち』|芸風と感想


f:id:tarookadato:20190413223315j:image

みなさまお気づきだろうか?

 

かまいたち』の漫才の特徴である、観客が一瞬後ずさりしたくなるほどの、゛理不尽な主張を繰り広げる゛背景には、理不尽さというものが、ロジカルに解体してしまった場合、滑稽さという笑いが生まれるというメッセージが隠されていることを。

 

本能のまま、我がまま、を真剣に生真面目に追い求める、気迫あふれる役の山内さんと、常識的で、のんびりしたたち位置の濱家さんだからこそ、このコンセプトが可能となるのだ。

 

また、コンビとしての個性もさることながら、多くの賞を受賞していることからもわかるように、実力者としての存在感についても触れていかねばならない。

 

こんかいは『かまいたち』のご紹介をさせていただきたい。

 

 

かまいたちのプロフィール

 

結成/2004年

所属事務所/よしもとクリエイティブ・エージェンシー

スタイル/漫才、コント

賞/2007年第28回ABCお笑い新人グランプリ最優秀新人賞

2007年笑いの超新星新人賞

2008年第43回上方漫才大賞新人賞

2012年第33回ABCお笑いグランプリ優勝

2012年第42回NHK上方漫才コンテスト優勝

2016年歌ネタ王決定戦2016優勝

2016年キングオブコント2016第3位

2017年キングオブコント2017優勝

2017年M‐1グランプリ2017年第4位

2018年M‐1グランプリ2018年第5位

2018年ロケ芸人最強決定戦外王2018優勝

2019年ロケ芸人最強決定戦外王2019優勝

2019年第54回上方漫才大会奨励賞

 

ボケ担当:山内健司(やまうちけんじ)

誕生日/1981年1月17日生まれ

出身地/島根県

血液型/B型

身長/168Cm

趣味/スニーカー集め

 

ツッコミ担当:濱家隆一(はまいえりゅういち)

誕生日/1983年11月6日生まれ

出身地/大阪府

血液型/B型

身長/188Cm

趣味/料理、野球

 

[同期]

藤崎マーケット

 

かまいたちの考察

 

あらためて、2004年結成という『かまいたち』のプロフィールをみると、へんなはなし、もっと昔から彼らをテレビでみていたかのような錯覚をおぼえる。

 

というのも、過去にたくさんのお笑い芸人たちが、登場した節々の時期に、彼らは漫才をしており、たくさんの個性的な芸人たちのテレビ出演を見かけなくなったのちも、『かまいたち』は頻繁にテレビでみかけていたからだ。

 

それはそのはずで、これまで獲得した賞を振り返っても、納得なはなしだ。

 

はじめて、みたかまいたちのコントは、音楽ネタで、濱家さんが音楽的指導をするなか、山内さんが、どんどん独自の世界へ突入していき、さいごは「なんでそんなことになんねん」という、濱家さんの悲哀を感じるツッコミで終了するというものだ。

 

 

濱家さんのツッコミには、哀愁が感じられる。

 

かまいたち』の漫才、コントは論理の脱線した状況、道徳的に納得のいかないパターンをモチーフとした内容が多く、論理の破綻が引き起こされ、それを、修正するなかに、゛滑稽てき可笑しさ゛がうまれる。

 

そういった方向性を継続させている彼らだからこそ、インパクトが強く、印象に残っているのだとおもう。

 

山内さんが演じるアクのつよいキャラクターの多くは、中学校~社会人くらいまで、日常生活のなかに一人くらい、「ああ、こういうやついるよな」と納得できて、かつ、濱家さんの心情に深く共感できるほど、完成度のたかいつくりこみだ。

 

特徴を簡単にいうと「自己愛がつよくなにがなんでもじぶんの非をみとめないキャラクター」である。

 

気がつくと、濱家さんのみならず、過ちを指摘されてからの山内さんのキャラクターの変貌ぶりを楽しんでいるじぶんがいる。

 

秘密を共有した二人の学生がいて、そのうちの一人、濱家さんの秘密を、かたく口止めされていたにかかわらず、山内さんがクラスの人間にばらす。

 

それが濱家さんにバレて問いつめられたさい、「俺は、誰にもいわんといてよって、そいつにいってからいったんや」と、第三者に責任転換をする。

 

そして、じゃんけんを例えにして、はなしをはぐらかそうとする。

 

「お前は俺に腹たってる、俺はそいつに腹たってる、だからじゃんけんみたいになってるのよ」

「お前は俺に勝つ、俺はそいつに勝つ、そいつはお前に勝つ」

 

濱家さん「なんでおれがそいつに負けんねん!」

 

あやふやになりそうな深刻な現状と、それを柔らかく、修正していく絶妙な感じは、確かに、生きてりゃこういったシチュエーションは存在するだろうと、誰のこころにもある、弱い部分とリンクするため、共感を覚えやすい。

 

山内さん演じるキャラクターがつくりだす虚構の現実を、濱家さんが端的に、ひきはがし、山内さんが、ヒートアップしていき、根本的なはなしの内容をひっくり返すあたりが、確かに、屁理屈だなあと、感じさせもするが、同時にトンチのような面白さがあるのが事実だ。

 

たまに、ヒートアップした山内さんへのツッコミをかける濱家さんが、トンチのような機転で、あげあしをとられるシチュエーションのつくりこみは見事だといえる。

 

二人のあらゆる部分を対極にすることで、オーソドックスなシチュエーションから、独特の笑いが生まれるさまは、実力派『かまいたち』ならではの芸当といえるだろう。

 

 

終わりに

 

二人の出で立ちはどこか愛嬌があり、ほがらかとしている。

 

かまいたち』の漫才、コントは、すごく、個性的でありながら、観客から距離を離さない内容となっており、さまざまな層の人が楽しめるのではないだろうか。

 

大げさな笑いに偏るのではなく、あくまでコンセプトを充実させているところにベテランの妙技を感じさせる。

 

かまいたち』は、個人的に、みていて、なにかを期待してしまう。

 

こんかいはすごく面白い、ホームラン級の笑いが内在されていないかな?とか、そういった部分も魅力の一つだろうなと感じる。

 

これからも、充実した漫才、コントを楽しみにしていたい。

 

[関連記事]

天才サンドウィッチマン|大御所になっても進化し続ける|芸風と感想

 

若き一流漫才師『ミキ』|芸風と感想

 

緊張感と解放感のコンボ、コント師『バイきんぐ』|芸風と感想


f:id:tarookadato:20190412095915j:image

みなさまお気づきだろうか?

 

『バイきんぐ』のコントは、一見小峠さんの刺激的な、ことばのツッコミによりコントが展開しているように感じるが、実際の流れは西村さんのボケが醸し出す閉塞感を、小峠さんが、観客に代わり打破していく内容であることを。

 

コントの最中は両者ともに気合いが入っており、ツッコミとボケの激しい対立がうまれ、それが、観客に強い刺激を与え、刺激の行き着く先がカタルシスになるという特徴がある。

 

両者のかけひきの独自性は、当初みたころから、ハッキリいって、過去に類似したものをみたことがないほどの異彩を放っており、斬新さを感じたものだ。

 

こんかいはそんな『バイきんぐ』をご紹介したい。

 

 

バイきんぐのプロフィール

 

結成/1996年

所属事務所/ソニー・ミュージックアーティスツ

スタイル/コント

賞/キングオブコント2012年優勝

 

ツッコミ担当:小峠英二(ことうげえいじ)

誕生日/1976年6月6日生まれ

出身地/福岡県

血液型/O型

身長/170Cm

特技/ギター

 

ボケ担当:西村瑞樹(にしむらみずき)

誕生日/1977年4月23日生まれ

血液型/O型

身長/171Cm

趣味/映画、テレビゲーム

 

[同期]

ヤナギブソン

 

バイきんぐ考察

 

バイきんぐがキングオブコントで残した名言、「なんて日だ!」や「なんていえばいい!」はインパクトが強く、現在でもテレビで耳にすることがある。

 

ツッコミ担当の小峠英二さんの、ことば選びにおけるキーワード分析は、よく練られており、コントの流れが成立するために絶対不可欠なものだ。

 

コント事態は、二人の持ち味が合わさり、全体として「シュール」なものとなっている。

 

よくあるのが、コント開始直後は、まるで、二人はきょう初めて出会ったの?という風なちぐはぐさを演出し、西村さんの一人芝居をみている感じから、徐々に小峠さんが、西村さんの世界観に足を踏みいれていくという内容だ。

 

「自動車教習所」のように、序盤の小峠さんは絡みの勢いを抑えていて、西村さんが、力強く、しゃべる。(ちなみに二人の出会いは自動車教習所)

 

進行するにつれて、ネタの構成として西村さんの、一人よがりな独自の世界観があらわになっていき、それに耐えかねた小峠さんがするどいツッコミをみせはじめることにより、『バイきんぐ』のコントがはじまる。

 

西村さん「先生俺っすよ、俺、覚えてないですか?」

小峠さん「覚えてないね~」

西村さん「えーまじっすか、俺ですよ俺!」

小峠さん「覚えてないよ!ここ自動車教習所だよ!」

 

『バイきんぐ』が得意とするのは、異質な世界観作り、といえば、安っぽい表現になるが、西村さんの一人よがりな世界観を観客に恐いと感じさせ、それを小峠さんが絶妙に処理するスタイルだ。

 

「自動車教習所」のつづきでは、教習所に、相当の愛着をみせる生徒役の西村さんが、教官役の小峠さんに「俺、免許とったら石焼き芋の運転手になりたいんすよね」

 

西村さん「いしや~きいも~や、いも!」

小峠さん「!………なんていえばいいッ!」

 

このスタイルは、それ以降もつづいていき、バイきんぐのコントを成立させるもう一つのキーワードが、西村さんの「独自の思いこみ」である。

 

西村さんはたびたびホラー映画に登場するような、異質なキャラクターを演じ、独自の思いこみが加速していき、観客が、怖いと感じる部分を小峠さんが、シュールな笑いに変えていくという特徴がつづいている。

 

小峠さんのツッコミにより、コント全体に漂う恐さがシュールさとなり、また異質でいて、どこか憎めない、キャラクターの西村さんのボケがつづくうちに、一種のコミカルさも生まれ、「恐さ×シュール×コミカル」な内容が生まれる。(もちろんすべての作品に関してではないが)

 

 

バイきんぐ考察2

 

『バイきんぐ』の魅力をもうひとつあげるとすると、テクニカルな部分だ。

 

コントのさなか、恐い世界観を披露する西村さんに対して、小峠さんがあえて、それに゛楽しんでノル゛というのも『バイきんぐ』のコントの特徴だ。

 

コンビニの店長をしている設定の小峠さんの店に、バイト面接にきた西村さんが、愚直な正直者の設定でやはり、やらかすのだけど、そんななかで志望動機が「楽そうで時給がいいから」という内容に触れ、小峠さんが、それを気にいってしまう。

 

「楽そうで時給がいい?ふつうは、そう書くわけにはいかないから、接客が好きでこの仕事が向いてるとおもいましたとか、おもってもないことを書くものだけどね。」

 

「それに比べて君はなんて正直なんだ」

 

西村さん「光栄です」

 

という感じの流れで、西村さんの世界観に、小峠さんが乗っかっていく、ツッコミは斬新だ。

 

確かに、ボケにツッコミがノルというスタイルは、ほかの漫才師もコント師もやることがあるが、コントの中盤からボケに乗っかり、昇り調子のまま、終わりを迎えるコントをやるコント師はバイきんぐ以外にしらない。

 

奇怪な世界観のなか、二人ではしゃぎあっている姿は微笑ましい。

 

書いてきたように、バイきんぐの笑いは基本シュールであるものの、構成のなかに、゛愛嬌゛の要素を盛り込んでおり、そのため、小峠さんのするどいツッコミの威力が上手に抑えられ、観客がついてくる仕組みができあがっている。

 

『バイきんぐ』における、西村さんの役割が、独自の世界観を拡大させつづけることならば、小峠さんは、観客とその世界観を結びつける役目を担っているのだ。

 

観客と、コントの軸が繋がっているからこそ、ボケに対する乗っかりという芸当を可能としている。

 

見慣れてくると、西村さんの強めなリアクションも、違和感がなくなってきて、ファンであれば、「よ!待ってました」的な展開に映るだろう。

 

シュールでいて、どこか愛嬌のある『バイきんぐ』のコントはやはり面白い。

 

 

終わりに

 

ふりかえれば『バイきんぐ』のコントをはじめてみたきっかけが、゛キングオブコント゛であり、伊集院光さんが、彼らを評価していることばを贈っていたのが印象的だった。

 

「バイきんぐは実力はあるので…」

 

それが、ほんとうだったがゆえの゛キングオブコント2012゛年優勝だった。

 

彼らのコントをもっとみたいとおもい、その後、ほかの作品も、いくつも拝見し、どれも楽しんでみることができた。

 

当初は、小峠さんのツッコミの印象が強かったものの、いくつものコントのなかに、観客を引き込む、共通性がうまれやすいコンセプトを盛り込んでおり、楽しめた。

 

彼らの世界観と、勢いは、ダウンすることなく、むしろ年々アップしていってる部分は驚かされる。

 

西村さんの、キャラクターも鉄板となり、みていて安心感を覚える。

 

そんな彼らはバラエティー番組に出演するようになっても、新しいコントを展開していく姿は『サンドウィッチマン』どうように、好印象だ。

 

これからも、持ち味を活かした新しいコントをつくりつづけてほしいとおもう。

 

[関連記事]

天才サンドウィッチマン|大御所になっても進化し続ける|芸風と感想

 

若き一流漫才師『ミキ』|芸風と感想